熱心と狂気の境目に何があるのか
先日部活でミーティングをした時のこと。
自分が引き寄せを使ってうまくいった話をしてみた。
興味津々に聞いてくれる選手もたくさんいたが、
熱くなれていない自分に驚愕した。
====その時の話======
僕が高校3年生の時の話。
高校球児としての最後の大会を迎えていた。
ベスト8がけのゲームは見事な逆転勝ちを収めた。
チームや応援団は大盛り上がり。
しかし、一人だけ浮かない顔をしている選手がいた。
それが僕だ。
情けないことに、4番打者でありながら5打席ノーヒット。
これじゃマズイと思い、
帰りのバスの中で、中学時代の友人二人に即メールをした。
「練習、付き合ってくれんかな?」
彼らは隣の高校に通い、僕らよりも少し早く引退を迎えた。
「いいよ。何時?」
二つ返事で答えてくれた。
そして、途中下車で家の近くのバス停に下ろしてもらったが、
時間は17時半。7月だったが、6時を過ぎると薄暗くなってくることがわかっていた。
最寄りと言いつつ、家までは走っても15分。
「やばいなぁ。せっかく練習の約束をしたのに間に合わない。」
とにかく頑張って走った。
すると、車に乗った見たことのある人が声をかけてきた。
「今日はお疲れさん。ナイスゲーム!」
そこには、うちの学校の校長先生がいた。
これまで一言も話したことがなかったので、
僕が誰なのかすらもわかっていなかっただろう。
「ありがとうございます!」
僕のその一言のあと、校長先生は車を走らせた。
すると50mほど進んだところで急に止まった。
「乗っていくか?」
ミラクルが起きた。
そして、予定よりも10分早く自宅に到着することができ、
急いで自転車に乗り換え、中学校へ向かった。
なんとかたどり着いた頃には、やや薄暗い。
友人Aはちゃんとそこに待っていてくれた。
自分のバッティングの不調のほとんどの原因は、
開いていること。
だからいつも、背中側から投げてもらうティーバッティングを行う。
たった15分のことだったが、
黙々とボールを投げてくれた。
そして、練習終わりに僕は彼にこう言った。
「明日の試合のこと、絶対に新聞に載せるから。必ずこのこと語るから。」
友人には冗談にしか聞こえなかったと思う。
それでも、
「絶対語ってよ。楽しみにしてる。」
そう言って僕の言葉を信じてくれた。
そして大会当日。
朝6時にもかかわらず、友人Bは小学校に来てくれた。
Bと僕は小学校からの付き合い。
少年野球の時はバッテリーとしてチームを盛り上げた。
そんなBも朝6時からなのに、小学校に来てくれて僕に
ティーバッティングのトスをしてくれた。
僕の中で前日と、この朝のティーで確実に今日はいけるという感覚を手にした。
Bにも同じことを言った。
「今日のこのティーのこと、絶対に新聞記者に語るから。楽しみにしてて!」
Bも嬉しそうに、
「楽しみにしてるわ。」
と言ってくれた。
そうして迎えた準々決勝。
結果的に、1−5で負けてしまった。
僕は練習の甲斐があって3安打。
しかし、チームメイトの昨日の打線爆発とは打って変わって、
全くだった。
最終的に、僕がランナーにいるときに最後のアウトを迎えた。
「あー、ここで高校野球は終わるんだ。」
思わず空を見上げた。
そして、試合終了後。
最後のミーティングをダグアウトで終え、
球場を後にしようとしていた時、
そこに新聞記者が待っていた。
「あのー、読売新聞ですけど・・・。」
そして、僕の名前が呼ばれ、僕がインタビューされることになった。
最初の方は、試合についてのいくつかの質問があったが、
僕にとってはそんな質問内容はどっちでもよかった。
そんなことより早く、友人のことを伝えたかった。
「実はこんなエピソードがありまして・・・」
そうして僕は球場を後にし、高校野球人生を終えた。
・・・
そして翌日、読売新聞を見たら、
しっかり僕の話したことが記事になっていた。
しかも写真付きで。
あれだけ自分が打って勝った試合では写真にならなかったのに。
負けたら写真になるなんて、なんとも皮肉な話しだ。
そして、友人に連絡し、
約束を果たしたことを伝えた。
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こんな嘘のような本当の話を体験している僕なのに、
熱い気持ちで話せない自分にものすごく悲しくなった。
あの頃の自分はどこに行ったんだ・・・。
熱心なだけなら、誰にでもなれる。
狂気はある意味危険な存在だ。
しかし、熱心を超えて行った人にしか届かない世界。
アメフトのこと、登山家のこと
様々なことに関していろんな人がいろんなこと言っているこの頃。
僕はまず、熱狂できているんだろうか。
そんなことを考えたここ数日だった。